世界の人口の約1/3が欠乏していると言われる亜鉛。
亜鉛は300種類以上の代謝酵素の活性に必要であり、欠乏することによりさまざまな症状が現れます。
そのひとつが肌トラブルです。
今回は肌トラブルと亜鉛欠乏の関係や亜鉛の摂取量、摂取する上での注意点について解説していきます。
目次
亜鉛の働き
亜鉛にはタンパク質の合成においてとても重要な役割があります。
タンパク質はDNAの遺伝情報を設計図として作られるのですが、その遺伝情報を読み取るときに必要なのが転写因子と呼ばれるものです。
転写因子がDNAに結合することで遺伝情報が読み取られていくわけですが、その転写因子に必須の成分が亜鉛になります。
また、亜鉛はDNAが複製される時にも必須の成分です。
DNAが複製されるときには、ポリメラーゼという酵素が働くのですが、そのポリメラーゼが作用を発揮するには亜鉛が必要になるのです。
タンパク質の合成やDNAの複製は、細胞分裂がさかんなところでは頻繁に行われます。
そのような部分では亜鉛がたくさん必要になるということです。
亜鉛不足による肌トラブル
肌は常に新陳代謝が起こっています。
つまり細胞の入れ替わりが激しい組織ということです。
そういった組織では細胞分裂がさかんに行われており、亜鉛の需要も高まります。
実際に、全身の亜鉛の約6~20%は皮膚に存在しているそうです。
つまり、皮膚は亜鉛が不足すると影響が出やすい組織ということになります。
例えば、虫刺されや引っ掻き傷、火傷などが治りにくい場合は細胞分裂がうまくいっていない、つまり亜鉛が足りていない可能性があります。
また、亜鉛は皮膚の炎症を抑えるのにも必要な成分になります。
アトピーは炎症が亢進している状態ですが、この炎症の亢進には免疫細胞の異常な活性化や過剰なオメガ6系脂肪酸などが関わっています。
免疫細胞の活性化の調整を行ったり、オメガ6系脂肪酸の働きを抑えるときに亜鉛が必要になります。
このように、亜鉛は肌の健康維持にとって欠かせない成分なのです。
子供のアトピーはお母さんの亜鉛不足が影響!?
小児のアトピーが増えてきていますが、これには亜鉛不足が関連していると考えられています。
赤ちゃんはお母さんの栄養を引き継いで産まれてきます。
なので、お母さんが亜鉛不足だと赤ちゃんも亜鉛不足の状態で産まれてくるということです。
また、母乳を飲んで育つ子もお母さんの栄養状態の影響を受けます。
つまり、お母さんは妊娠前、妊娠中から亜鉛をしっかり摂取しておかないと、子供にアトピーなどの皮膚炎・皮膚症状が現れやすくなります。
亜鉛はどれくらい摂取すればいいのか?
亜鉛の理想的な摂取量はその人の状態によって変わりますが、健康維持のためならだいたい1日15mgくらいです。
平成25年の日本人の1日あたりの亜鉛の摂取量は平均してだいたい8mgくらい(年齢によってあまり差はない)なので、多くの人が亜鉛の摂取量が足りていないようです。
つまり、亜鉛は意識的に摂取しないと不足する可能性が高い栄養素です。
亜鉛を豊富に含む食材は以下のようなものがあります。
しかし、食事だけでは亜鉛の摂取量が足りない場合もあると思います。
そういうときはサプリメントで補充する必要もあるでしょう。
iHerbで購入できるものとしては以下のようなものがおすすめです。
食材とサプリメントをうまく組み合わせながら、亜鉛の必要量を満たしていきましょう。
亜鉛サプリメントを使用する際の注意点
サプリメントで亜鉛を摂取するときには注意点があります。
それは亜鉛以外のミネラルの欠乏です。
ミネラル同士は吸収を阻害しあうため、ひとつのミネラルに偏って摂取していると他のミネラルが不足しやすくなります。
亜鉛の摂取量が多くなると、ミネラルの中でも特に銅が不足しやすくなります。
(亜鉛は銅の吸収を阻害するとともに、銅の排泄を促します)。
銅はヘモグロビンの産生や血管の新生などに関わり、生体にとっては必須のミネラルです。
特に妊娠中は、銅欠乏により胎児の成長に影響が出る恐れがあります。
なので、亜鉛をサプリメントなどで大量に摂取するときは銅の欠乏に注意する必要があります。
銅欠乏を防ぐには、少量の銅が含まれている亜鉛サプリメントもあるので、そういったものを使用するのもひとつの方法です。
まとめ
亜鉛は皮膚の健康維持には欠かせない栄養素です。
亜鉛が不足するとさまざまな皮膚症状が現れる可能性があり、多くの人が摂取量が足りていないという現状です。
つまり、亜鉛は意識的に摂取していく必要があります。
亜鉛は大量摂取により、他の栄養素のバランスを崩す可能性があるので、その点については注意しておきましょう。