鉄不足は貧血をはじめ、疲労、手足の冷え、イライラ、うつ症状など様々な不調の原因になります。
特に女性は鉄が不足しやすく、薬やサプリで鉄分を補給している人も多いと思います。
鉄は身体の機能を維持するために不可欠なものですが、摂り過ぎは身体に害を与えることもあります。
今回は疲労、イライラなどの症状を解消するための鉄の摂り方のコツや鉄を摂取する際の注意点について詳しく解説していきます。
目次
鉄不足は蔓延している
鉄不足による症状
鉄が足りないと貧血のほかイライラ、疲労感、手足の冷え、うつ症状などさまざまな症状が起こります。
鉄は体内で非常に重要な働きをするミネラルなのです。
鉄不足により現れる症状の中で疲労に関する症状が特に多いようです。
それは鉄が細胞の中のミトコンドリアでのエネルギー産生に大きく関わるためです。
ミトコンドリアは人間に必要なエネルギーの大部分を作っています。
鉄不足によりミトコンドリアのエネルギー産生の効率が大きく低下します。
そのため疲労症状やそれにともなうイライラ、うつ症状などメンタル的な症状も現れるのです。
鉄の指標-ヘモグロビン・フェリチン・血清鉄
鉄が足りているかどうかは血液検査でわかります。
貧血の指標になるヘモグロビン。
これは会社の健康診断などで必ずといって測る項目なので誰でもみたことがあると思います。
また、もうひとつの鉄の指標としてフェリチンをいう項目があります。
フェリチンというのは細胞内に存在するタンパク質で、鉄を貯蔵する役割があります。
鉄を貯蔵しておいて必要なときに必要な場所に運搬します。
ヘモグロビンとフェリチンはどちらも12を下回ると鉄が足りていないということを示します。
ヘモグロビンとフェリチンのほかに血清鉄の項目も鉄の指標になります。
血清鉄は血液中に存在する鉄の量を示しています(ヘモグロビンに含まれる鉄とは別の鉄のことです)。
血清鉄は100くらいが適正な値となります。
ヘモグロビンが良くても鉄は足りていない場合がある
食事からの鉄分の摂取が少なくなったり、生理による出血などで体内から鉄が流出した場合でも血液中の鉄の量は一定に保たれます。
それは貯蔵鉄であるフェリチンから血液中に鉄が供給されるためです。
フェリチンは鉄不足が起こった時のためのバックアップとして機能します。
しかし、鉄不足が続くと貯蔵鉄であるフェリチンが枯渇していき、血液中の鉄の量が維持できなくなります。
血液中の鉄の量が減ってくると、いよいよ赤血球中のヘモグロビンの材料として鉄を供給できなくなります。
体内の鉄が減っていく順番は1.フェリチン→2.血清鉄→3.ヘモグロビンということになります。
つまり、ヘモグロビンの数値が良くてもフェリチンや血清鉄は低下しているという場合もあるということです。
普段の健診でヘモグロビンしか測定していない人は、隠れ鉄欠乏となっていることがあります。
フェリチンが高くても安心できない
鉄が不足すると始めに低下するのはフェリチンです。
なので、フェリチンの数値がある程度キープできていればとりあえず鉄は足りているという指標になります。
しかし、フェリチンの数値が高ければどんな場合も安心というわけではありません。
身体のどこかに炎症があるとフェリチンの数値は上昇します。
フェリチンは普段は細胞中に収められています。
しかし、身体に炎症があるとそこの細胞がダメージを受けて中のフェリチンが漏れ出てきます。
細胞中のフェリチンが漏れ出た分だけ血液中のフェリチンの量が増えて、見た目上の数値は上昇することになります。
明らかに鉄不足の症状があるのにフェリチンが高いという場合は、身体に炎症が起きている可能性が高いということになります。
メンタルの低下は鉄不足が原因?
ある種の神経伝達物質の産生に鉄が関わっています。
例えばドーパミン。
ドーパミンの合成には鉄が必要です。
ドーパミンはやる気に関わる神経伝達物質で、鉄不足によるドーパミンの低下は意欲低下やうつ症状などのメンタル症状と関連します。
また、ドーパミンは学習にも関わるので、成長期の子供が中学や高校に入って成績が急に落ちたという場合、実は鉄欠乏だったということもあります。
鉄は扱いが難しいミネラル
吸収が難しい-胃酸・腸内環境
鉄に限ったことではありませんが、ミネラルは体内に吸収されにくい栄養素です。
鉄はそのままでは吸収されません。
イオン化されないと小腸からは吸収されないのです。
鉄は酸性環境においてイオン化します。
酸性条件をつくる第一の要因が胃酸です。
つまり胃酸がきちんと分泌されていないと鉄がイオン化できず吸収されません。
また、腸内環境を維持しておくことも重要です。
善玉の腸内細菌は食物繊維を発酵して短鎖脂肪酸を分泌しています。
短鎖脂肪酸は腸内を酸性に保ち、鉄のイオン化を助けているのです。
活性酸素のもと
鉄は人間の身体にとって欠かせないものですが、同時に身体にダメージを与えるもとにもなります。
鉄は体内で活性酸素を発生させるのです。
体内での鉄はヘモグロビンやフェリチン、トランスフェリンなどのタンパク質に結合した状態で存在しています。
これは生体の一種の安全機能であり、鉄がタンパク質に結合した状態であれば活性酸素は発生しません。
しかし、鉄が過剰になるとタンパク質に結合していないフリーの鉄が増えることになります。
つまり、鉄の摂りすぎは身体に損傷を与えることになります。
吸収されても体内で利用されていない場合がある
鉄は足りているけど、体内での利用がストップしていることあります。
それは身体に炎症がある場合です。
身体に炎症があると、そこでは活性酸素が発生します。
鉄は活性酸素を発生させるので、炎症部位に鉄があると活性酸素の発生を助長させてしまいます。
そうならないように、炎症がある場合には身体には鉄の利用をストップさせる機能があるのです。
身体のどこかに炎症があると肝臓からヘプシジンというタンパク質が分泌されます。
ヘプシジンは腸からの鉄の吸収を抑制したり、血液中に鉄が出てこないように細胞内のフェリチンに鉄を留まらせる作用があります。
炎症がある場合には生体防御反応として鉄が利用できなくなってしまうのです。
鉄をうまく利用するために
いきなり鉄サプリは使わない
むやみに鉄サプリを摂取することはオススメできません。
鉄は活性酸素を発生するので、使い方によっては身体に害を及ぼすことがあるからです。
まずは鉄が不足している原因を見極めることが重要です。
鉄不足をもたらす原因を改善すれば、鉄サプリを使わなくても鉄不足を改善できることがあります。
炎症をとる
炎症を除去しないと鉄は吸収されません。
なので、まずは炎症がおこっている部位を特定して治療することを優先しておこないます。
炎症がおこりやすい部位は腸、胃、上咽頭、歯、肝臓です。
胃に炎症を引き起こす原因の大部分はピロリ菌感染です。
日本人はピロリ菌の感染率が高いので、まずは病院で感染の有無を確認しておきましょう。
後述しますが、胃がきちんと働いているかどうかはミネラルの吸収においてとても重要です。
胃の炎症の治療は最優先でおこないましょう。
上咽頭炎は耳鼻科での治療、歯周炎・虫歯は歯科での治療で対応できると思います。
腸と肝臓の炎症は食生活にかなり影響されるので、食事の改善をしていくことになります。
腸内環境が悪化すると、それにともなって肝臓も炎症をおこします。
なので、腸のケアをおこなっていけば肝臓の炎症も一緒に改善していくことが多いです。
腸の炎症の改善については別記事「腸内環境がなかなか改善しないのは副腎疲労が原因だった!?〜副腎と腸の関係について〜」を参考にしてみてください。
胃酸を出す
鉄はイオンの状態でないと吸収されず、胃酸は鉄がイオン化するのに必要です。
胃酸の分泌を低下させる大きな要因のひとつがピロリ菌感染です。
ピロリ菌により胃に炎症がおこると、胃酸を分泌する細胞がダメージを受けて胃酸の分泌が低下してしまいます。
ピロリ菌の除菌により胃の炎症が少しずつ改善していき、胃酸の分泌も増えていきます。
胃酸抑制剤の使用も問題です。
日本人は胃酸抑制剤を使用している人が多いのですが、慢性的な使用は栄養素の消化吸収にとって大きなマイナス要因です。
重度の逆流性食道炎や胃潰瘍などの場合を除き、胃酸抑制剤の継続的な使用は避けた方がいいでしょう。
胃酸の分泌が低下している場合は食前に梅干し、酢の物、レモン汁を摂取すると胃酸の分泌を促すことができるので試してみてください。
キレート鉄を利用する
キレート鉄とは鉄にアミノ酸が結合した状態のものです。
アミノ酸が結合したものは小腸から優先的に取り込まれるという特徴があります。
もしサプリメントから鉄を摂取する場合はこういったものを使用すると効率よく鉄を補給することができます。
例えば↓のようなものがあります。
フェリチンを測定しながら
サプリメントから鉄を補給する場合は定期的に検査値を確認しておくことをオススメします。
鉄は活性酸素を発生するため、摂りすぎると逆に身体にダメージを与えることになるからです。
鉄が補充されているかどうかの良い指標になるのがフェリチンです。
まずはフェリチンが20以上になること目標にするといいと思います。
フェリチンが3桁になっている場合は身体に炎症がおきている可能性が高いため、一旦鉄サプリの摂取はやめて炎症の治療をした方がいいでしょう。
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鉄不足を改善する方法は鉄サプリや薬を飲むことだけではありません。
鉄の吸収効率を上げたり、鉄の体内利用率を上昇させることでも鉄不足の症状は改善できます。
今回紹介した方法はどれも簡単に実践できるものなので、鉄不足の症状がある人はすぐにでも試してみてください。