糖質制限には体重減少や血糖コントロールの改善、小児のてんかん発作を抑えるなど様々なメリットがあります。
また、糖質制限をしている方が体調がなんとなく良いという方もいるでしょう。
しかし長期にわたる糖質制限は、人によっては脂肪肝(非アルコール性脂肪肝)を引き起こして肝臓の炎症を助長するというデータが出ています。
目次
非アルコール性脂肪肝とは?
通常、脂肪肝の原因としては過度な飲酒が挙げられます。
しかし、あまりお酒を飲まない人であっても脂肪肝になっていることがあります。
これが非アルコール性脂肪肝です。
健診受診者のうち、男性の約40%、女性の約20%が非アルコール性脂肪肝になっているという報告もあります。
非アルコール性脂肪肝は倦怠感などの症状が現れることがありますが、基本的には自覚症状に乏しく自分では気づきにくいものです。
糖質制限により脂肪肝になる理由
糖質制限をおこない身体への糖質の供給が極端に減ってしまうと、人間の身体は飢餓状態と判断します。
飢餓状態と判断されると、脂肪組織から貯蔵エネルギーである中性脂肪が切り出されて脂肪酸が血液中に放出されます。
放出された脂肪酸はエネルギーとして利用されるほか、一部がケトン体(アセト酢酸、β-ヒドロキシ酪酸、アセトン)に変換され脳のエネルギーとなります。
しかし、エネルギーとして使用しきれずに余った脂肪酸は肝臓に取り込まれます。
糖質制限を続けていくと徐々に肝臓に脂肪が蓄積していくことになり、脂肪肝が形成されていきます。
糖質制限による脂肪肝の血液検査所見
肝酵素の上昇
脂肪肝は肝臓が炎症を起こしている状態です。
炎症により肝臓の細胞がダメージを受けて、細胞の中の酵素の一部が血液中に漏れ出てきます。
その中でも肝臓に多く含まれる酵素であるAST、ALTが上昇します。
脂肪肝のような軽微な炎症ではASTよりALTが上昇する傾向があります。
中性脂肪の低下
糖質制限を行うと中性脂肪がエネルギーとしてどんどん使われるので、中性脂肪の値が低下していることが多いです。
フェリチンの上昇
フェリチンとは鉄を貯蔵するタンパク質のことです。
フェリチンは鉄欠乏の指標として使われることが多いのですが、炎症の指標としても使うことができます。
フェリチンは肝臓に多く含まれるので、肝臓に炎症が起こると肝細胞の中からフェリチンの一部が漏れ出てきます。
つまり、脂肪肝ではフェリチン値が上昇していることが多いです(鉄欠乏があると元々のフェリチンが少ないのであまり上昇しないこともありますが…)。
脂肪肝による影響
脂肪肝は肝臓に炎症を起こしている状態です。
脂肪が蓄積するとその脂肪に対してマクロファージが集積します。
マクロファージは脂肪により活性化し、種々の炎症性サイトカインを放出して肝臓だけだなくその他の臓器に炎症を引き起こします。
炎症による影響は様々ですが、代表的なものとしてはインスリン抵抗性や副腎疲労の原因にもなります。
もちろん肝臓の機能も低下するので解毒代謝の低下、糖新生やグリコーゲン貯蔵の低下による低血糖症状も引き起こすことがあります。
まとめ
糖質制限によるメリットは確かにありますが、長期的におこなうと人によっては脂肪肝を引き起こして肝機能の低下を招くことがわかっています。
糖質制限は身体のメンテナンスとしてたまにおこなう程度にとどめ、長期的におこなうことは避けた方が無難だと思われます。