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運動による副腎疲労改善・抗ストレス効果について

目次

副腎疲労とは?

副腎疲労とは主にストレス、栄養失調や体内の慢性炎症が原因となり、副腎から分泌されるコルチゾールというホルモンが少なくなっている状態です。

 

コルチゾールには身体の機能を維持するための大切な役割がたくさんあります。

以下のとおりです。

①炎症を抑える

②血糖値を維持する

③抗ストレス作用

④免疫調節作用

⑤概日リズムの調整作用

コルチゾールの分泌が少なくなることにより、これらの機能が維持できなくなります。

①炎症が抑えられない→過剰なアレルギー反応の原因、エネルギー産生の低下、うつの原因

②血糖値が維持できない→低血糖頻発による疲労、眠気、うつ症状

③ストレスに対抗できない

④免疫の調節ができない→過剰なアレルギー反応の原因

⑤概日リズムが調整できない→睡眠障害、昼夜逆転

コルチゾールの分泌低下、つまり副腎疲労になると疲労をはじめ様々な症状が現れます。

 

副腎疲労の影響は多岐にわたるので、まったく関係ないと思っていた症状の原因が実は副腎疲労だったということもあるのです。

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なぜコルチゾールの分泌が低下するのか

突然ですが、“副腎疲労”はコルチゾールを分泌する“副腎”が“疲労”しているわけではありません。

 

副腎は脳の視床下部-下垂体からの命令を受けてコルチゾールを分泌しています。

例えば、ストレスや低血糖、炎症などがあるとそれらを改善するために視床下部-下垂体がコルチゾールをもっと出すように副腎に命令します。

 

しかし、コルチゾールには身体のタンパク分解作用や免疫抑制作用があります。

コルチゾールの過剰分泌が続くとタンパク異化の亢進や免疫力の低下が起こったり、またコルチゾールの過剰分泌により海馬の萎縮が起こることが認められています。

 

これらのことを防ぐために、視床下部-下垂体はコルチゾールの分泌を少なくするよう副腎に制限をかけるのです。

 

このようにして、炎症、低血糖、ストレスなどをきっかけに副腎からのコルチゾールの分泌は一時的に増えますが、コルチゾールの分泌増加に伴うタンパク異化の亢進、免疫力の低下、海馬の萎縮などを防ぐために最終的にはコルチゾールの分泌は低下していきます。

つまり副腎疲労とはコルチゾール分泌の命令系統である視床下部-下垂体-副腎系に障害が起こっている状態のことであり、脳にリミッターがかかっている状態のことなのです。

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運動による抗ストレス効果

副腎疲労の改善のためには運動が必須と言われています。

このことについては様々な研究がおこなわれており、そのメカニズムや根拠も示されているようです。

 

基本的に副腎疲労に陥っている人は健康な人に比べて視床下部-下垂体-副腎系が過敏に反応するようになっているようです。

なので、副腎疲労の治療においては視床下部-下垂体-副腎系が過敏な状態を改善していくことが必要になります。

 

運動は視床下部-下垂体-副腎系の過敏状態を改善することが報告されています。

運動不足な人が適切に設計された運動プログラムに6~12週間参加すると、トレーニング後の視床下部-下垂体-副腎系の反応はトレーニング前より有意に低くなる。

有酸素性体力が高い人は、体力が低い人に比べて、激しい仕事量に耐えることができ、ストレスを最小限に抑えられることを実証している 。

高負荷の有酸素運動は、心理的ストレスに対する保護も与えるようである。

一過性の心理的または身体的ストレスにさらされると視床下部-下垂体-副腎系の活性化が起こるが、その間に十分な回復時間をかけて間欠的にストレスにさらされると、徐々に視床下部-下垂体-副腎系の反応性が低下する。(1)

これらの報告をまとめると、継続的な運動により身体的・精神的ストレスへの耐性ができて、視床下部-下垂体-副腎系の過剰な反応が低下するようです。

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運動による抗炎症効果

炎症を鎮めることは副腎疲労の改善にとって重要なことです。

運動には抗炎症効果があることも報告されています。

高い有酸素運動能力がCRPレベルと逆相関する。(1)

CRPとは炎症反応の程度を示す数値のことです。

血液検査でも調べることができます。

 

運動によるCRPの低下には次のようなメカニズムがあるようです。

定期的な運動による内臓脂肪の減少を介して炎症性サイトカインの量を低下させる。

収縮している骨格筋から放出されるマイオカインの量は運動強度、運動時間に依存する。(1)

サイトカインとは細胞間の情報伝達のために分泌されるタンパク質で、細胞から分泌されて周囲の細胞に作用して特定の反応を起こさせます。

炎症性サイトカインは主に免疫細胞から分泌されて免疫反応を促進し、結果として炎症を引き起こします。

 

内臓脂肪を構成する脂肪細胞はサイズが大きくなると炎症性サイトカインを分泌するようになります。

運動により脂肪細胞のサイズを適正に保つことにより炎症性サイトカインの分泌を低下させることができます。

 

また、骨格筋からはマイオカインという物質が放出されることが報告されています。

運動時、収縮した骨格筋から分泌されるマイオカインは炎症性サイトカインの作用を抑えたり、抗炎症性サイトカインの量を増加させることにより抗炎症作用を示すことが知られています。

 

運動のこれらの効果により体内の炎症反応を抑えてコルチゾールの分泌量を低下させることができます。

炎症により慢性的にコルチゾール分泌が増えると、やがて視床下部-下垂体-副腎系がコルチゾールの分泌に制限をかけて副腎疲労となる原因になります。

 

炎症のケアは副腎疲労の改善に欠かせない要素となります。

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副腎疲労改善のためにはどのような運動がいいのか?

副腎疲労では初期と後期でコルチゾール分泌に違いがあります。

なので、副腎疲労の段階に合わせた強度の運動をしていく必要があります。

 

副腎疲労の初期はストレスに対して視床下部-下垂体-副腎系が過敏に反応してコルチゾールが過剰に分泌されている時期であり、見た目的にはとてもエネルギッシュです。

この時期は過敏な視床下部-下垂体-副腎系の反応を抑えて、コルチゾールの過剰分泌を適正化していく必要があります。

 

具体的には最大心拍数の70-80%、40-50分の有酸素運動を毎日おこなうことで、視床下部-下垂体-副腎系の過敏な反応の低下とストレス耐性の強化をもたらすことができます。

 

また、有酸素運動は基本的にはタンパク異化が起こる運動なので、筋肉量の低下を防ぐためにウェイトトレーニングも取り入れた方がいいでしょう。

 

しかし、運動は身体的ストレスによりコルチゾール分泌を増加させる一面もあるためやり過ぎには注意が必要です。(2)

 

副腎疲労の後期は視床下部-下垂体-副腎系にリミッターがかかった状態でコルチゾールの分泌が低下している時期であり、体力も低下しているためあまり激しい運動をおこなうと逆効果になります。

 

マイルドな運動によりコルチゾールレベルを上げていくことで、視床下部-下垂体-副腎系にかかったリミッターを外していくことができます。

 

具体的には30-50分のウォーキングやヨガを続けて、体力がつくにつれて運動の強度を上げていくほうがいいようです。

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副腎疲労の改善には適切な栄養の摂取が必要ですが、運動も欠かせない要素となります。

ただし、運動にも適切なやり方があるので、特に運動の強度・時間に気をつけて逆効果にならないように継続していくことが重要です。

 

引用

(1)Silverman MN, Deuster PA. 2014 Biological mechanisms underlying the role of physical fitness in health and resilience. Interface Focus 4: 20140040.http://dx.doi.org/10.1098/rsfs.2014.0040

(2)Z. Labsy、F. Prieur、B. Le Panse、M.-C. Do, O. Gagey, F. Lasne & K. Collomp (2013) The diurnal patterns of cortisol and dehydroepiandrosterone in related to in strong aerobic exercise in rerecreationallyulated soccer player, Stress, 16:2, 261-265, DOI: 10.3109/10253890.2012 .707259

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