胃にはタンパク質の消化、ミネラルの吸収の補助、口から入ってきた病原菌の殺菌などさまざまな機能があります。
胃の機能が低下するとさまざまな栄養素の吸収が低下したり、腸内環境が悪化することになります。
なので、もし胃の機能が低下しているのであれば早めに手を打ちたいところです。
そんなとき、胃がきちんと働いているかどうかを客観的に、しかも手軽に確認する方法があればいいと思いませんか?
血液検査では「ペプシノーゲン」という項目を測ると胃の機能が正常かどうかを推測することができますが、一般的な健康診断やクリニックでの検査ではなかなか測らない項目だと思います。
そこで使えるのが「MCV」という項目。
MCVは「赤血球の大きさ」を表していますが、この項目は健康診断の血液検査でも測定することが多いと思います。
MCVの数値から胃の状態をある程度推測することができます。
今回はそんなMCVについて解説していきます。
目次
MCVとは?
MCV(Mean Corpuscular Volume)とは「平均赤血球容積」のことで、ざっくり言うと赤血球の大きさを表しています。
赤血球は成熟するにつれてサイズが小さくなっていきます。
赤血球に関してはサイズが小さい方が理にかなっています。
正常な赤血球の大きさは7~8μm。
それに対して血管の中で一番細い毛細血管の内径は約7μm。
赤血球が毛細血管の中を通るにはかなりギリギリなサイズなんです。
赤血球のサイズが大きくなるということはつまり、血液が循環しにくくなってしまうということです。
赤血球のサイズを表すMCVの基準値は、通常80~100くらいです(検査会社により多少変動あり)。
しかし、基準値内であってもMCVが95以上だと赤血球のサイズが大きすぎるという印象で、血液の循環不良により細胞への酸素供給が低下して、慢性疲労などの症状が現れる可能性があります。
MCVの数値は90くらいが理想的です。
MCVが上昇する原因
MCVが上昇するということは、赤血球の成熟過程でなにか問題が起こっているということです。
成熟した赤血球には核やミトコンドリアなどの細胞小器官がなくなっています。
赤血球の機能は酸素の運搬に特化しているので、成熟の過程で余計なものはなくなるように設計されているのです。
これらの細胞小器官が抜けていく過程で赤血球のサイズも小さくなっていきますが、なんらかの理由で成熟がうまくいかないと細胞小器官が残ったっままになってサイズも大きいままになります。
赤血球の成熟不良の主な原因は、以下の栄養素の不足です。
- 葉酸
- ビタミンB12
これらのうち、特にビタミンB12は不足しやすい栄養素で、MCVが上昇する原因として多いのがビタミンB12不足です。
というのもビタミンB12の吸収には少し手間がかかるからなんです。
その理由については次の項目で解説します。
ビタミンB12の吸収に必要な胃の機能
ビタミンB12の吸収のためには胃がきちんと機能していることが重要です。
その理由について解説していきます。
ビタミンB12は摂取後、回腸の末端(小腸の終わりの方で大腸の手前)から吸収されます。
ビタミンB12が回腸末端で吸収されるまでにいくつかステップをふむ必要があります。
以下のような流れです。
このように、食べ物からビタミンB12を引き剥がすためには胃酸、ビタミンB12を回腸末端から吸収させるためには内因子が必要であり、ビタミンB12の吸収のためには胃の機能が重要だということがわかります。
まとめ:MCVの上昇 ≒ 胃の機能低下
今までの流れをまとめると、このような感じです。
もちろん、「MCVの上昇 = 胃の機能低下」と単純に言い切ることはできません。
MCVの上昇に加えて、お肉をあまり食べることができない、食後に胃がもたれるなどの症状を総合的に考慮して胃の機能が低下していると推測することはできます。
もしお手元に血液検査のデータが残っていれば、MCVの項目がないか確認してみてください。
もしかしたら胃の機能低下の兆候があるかもしれません。
胃の機能低下についてはこちらの記事も参考にしてみてください。
以上、今回の記事が参考になれば幸いです。