タンパク質は身体にとって最も重要な成分です。
筋肉、皮膚のコラーゲン、消化酵素、代謝酵素、ヘモグロビン、抗体…など全てタンパク質でできています。
タンパク質が不足すると身体のあらゆる機能が低下します。
なので、タンパク不足はなるべく早く改善しておきたいところです。
ところで、タンパク質はそのままの形では吸収されません。
消化されてアミノ酸にまで分解されてから吸収されます。
つまり、消化力の低下はタンパク不足の要因となります。
プロテインをたくさん飲んでもなかなかタンパク不足が改善しないのは、消化力の低下が影響しているのかもしれません。
今回は、タンパク不足の改善に必要な消化力の改善方法について記載していますので参考にしてみてください。
目次
タンパク不足の兆候
そもそも自分はタンパク不足なのか?…気になりませんか?
そこで、まずはタンパク質が不足しているかどうか判別する方法について紹介します。
見た目でわかる症状
タンパク不足が見た目でわかりやすいのは「むくみ」です。
血液中のタンパク質が少ないと、浸透圧の関係で水分が血管の外に逃げてしまいます。
その部分に水分がたまって、むくみとして現れます。
むくみがあるかどうかは、以下のところを注意してみるとわかりやすいと思います。
血液検査から判別
血液検査でもタンパク不足があるかどうかはある程度推定できます。
それぞれの項目が基準値より下だとタンパク不足の可能性があります。
AST、ALT、γ-GTPなどは代謝酵素であり、タンパク質でできているためこれらもタンパク量を反映します。
しかし、それぞれの項目は様々な要素によって影響を受けて数値が上下することが頻繁にあります。
例えば、総蛋白やアルブミンなんかは脱水があって血液が濃くなっていると、本来の数値より高く出ることがあります。
また、尿素窒素も便秘やタンパク質の消化不良、消化管からの出血などがあっても上昇します。
なので、あくまで目安としてください。
下の画像は、以前の私の血液検査データです。
当時は軽く糖質制限をしており、運動はあまりしていなかったという状況で、γ-GTPの数値が尿素窒素の数値に比べて高めなので、おそらく脂肪肝だったのかなーと思っています。
脂肪肝による炎症で、肝細胞の中に多く含まれるAST、ALTが逸脱して高めになっています。
クレアチニンの数値に比べて尿素窒素の数値が高すぎるので、タンパク質の消化がうまくできていなかったのだと思います。
あまりきれいなデータではありませんが、参考までに…。
そもそもタンパク不足では消化力が低下していることが多い
タンパク不足な人は以下の理由で消化力が低下しており、タンパク摂取量を増やしてもうまく消化吸収することができません。
- 消化酵素の不足
- 低血糖による消化力の低下
タンパク質の消化酵素であるペプシンやトリプシンなどはタンパク質でできています。
当然ながら、タンパク不足ではこれらの消化酵素の量も少なくなるため、消化力も低下してしまいます。
また、タンパク不足の人は低血糖を起こしていることが多いようです。
それは、タンパク質をうまく消化できないため、食事が糖質に偏りがちになるためです。
食事の糖質量が多くなると血糖値が不安定になりやすく、低血糖を起こしやすくなります。
低血糖が起こると交感神経が優位になるため、タンパク質を消化する胃酸の分泌が減ってしまいます。
これらの理由によりタンパク不足の人は消化力が低下しており、タンパク質を摂取してもうまく消化吸収できません。
なので、タンパク不足を改善するには、まずは消化力を改善させる必要があるのです。
消化力の改善に重要なこと
では、タンパク不足を改善するために必要な消化力の改善についてです。
消化力を改善させるには、消化力を低下させる要因を取り除くことが重要です。
タンパク不足になっている人の多くは、次の3つの要因によって消化力が低下していることが多いのではないかと思います。
低血糖の改善
先ほども記載しましたが、低血糖が起こると消化力が低下します。
低血糖が起こると消化力が低下する理由はこのような感じです。
なので、消化力を改善させるには、低血糖を改善しておく必要があります。
低血糖の改善方法については以下の記事に詳しく記載してあるので参考にしてみてください。
ピロリ菌の除去
ピロリ菌は胃に炎症を起こし、胃酸分泌を低下させる大きな要因となります。
ピロリ菌感染があるかどうかは、血液検査で調べることができます。
上の画像は以前の私の血液検査のデータです。
血液中のピロリ菌の抗体濃度が92.5U/mL、感染の判定は陽性とのこと。
ピロリ菌の除菌のためには、まずは胃カメラで胃の中の炎症を確認する必要がありますが、見てもらったら年齢の割には胃炎が進行していると言われてしまいました。
このように、ピロリ菌感染があると胃炎が進行します。
炎症があると当然ながら胃の機能は低下してしまうので、胃酸分泌も低下してしまいます。
なので、ピロリ菌については早めに検査・除菌しておくことをおすすめします。
便秘薬の使用にも注意を!
便秘薬の慢性的な服用も消化力を低下させる恐れがあります。
市販の便秘薬によく含まれている酸化マグネシウム。
酸化マグネシウムは便に水分を含ませて柔らかくし、排便を促す成分です。
しかし酸化マグネシウムには、胃酸を中和する作用もあります。
実際に胃酸過多による胃潰瘍・胃炎などの治療薬としても使われています。
酸化マグネシウムの使いすぎは、胃酸を中和して消化力を低下させてしまうため注意が必要です。
消化力が低下しているときはタンパク質の摂り方に工夫が必要
消化力が低下しているうちは、タンパク質の摂取の仕方を工夫する必要があります。
自分の消化力に合わせてタンパク質を消化しやすい形で摂取したり、消化力を補助しておくとタンパク質の吸収効率をあげることができます。
消化を補助する食べ物
食べ物の中にはタンパク分解酵素を持つものがあり、これらの食材を取り入れることでタンパク質の消化を補助することができます。
タンパク分解酵素はタンパク質でできており、タンパク質には熱に弱いという性質があります(熱によりタンパク質の立体構造が変化します)。
高温で長時間調理するとタンパク分解酵素の機能が低下してしまうので、この点には注意が必要です。
また、苦味成分は胃酸分泌を促し、酸っぱいものは胃酸の働きを補助してくれます。
これらの食材をうまく取り入れることで、低下した消化力を補うことができます。
なるべく少量頻回摂取で
これは消化力が低下した人に限った話ではありませんが、1回に消化できるタンパク質の量には限りがあります。
なので、一度に大量のタンパク質をまとめて摂取するよりは、それを数回に分けて摂取するほうが消化吸収の効率は上がります。
例えば、消化力が低下した状態でプロテインを一度に20gとか30gも摂取すると消化不良が起こります。
消化されなかったプロテインは吸収されないし、腸内環境を悪化させる恐れがあります。
消化力が極端に低下している人は1回3gとか5gで小分けにして飲み、1日の総量として20gとか30gを摂取するようにしたほうがいいでしょう。
消化しやすい形で摂る
消化力が低下している場合、タンパク質はステーキの塊肉などではなく、なるべく消化しやすい形で摂取することをおすすめします。
例えば、鶏ガラスープなど。
これは、スープにアミノ酸が旨味として溶け出しています。
アミノ酸はタンパク質が分解されたものなので、消化力が低下した人でも効率よく吸収することができます。
他には、塊肉ではなくミンチ肉を使うと、咀嚼が不十分であっても消化液に接する表面積が増えるため消化しやすくなります。
消化酵素のサプリメントを使用
タンパク不足の人は消化酵素の量が低下しているため、サプリメントなどで消化酵素を補うことでタンパク質の消化吸収がスムーズになります。
消化酵素のサプリメントにもいろいろ種類がありますが、プロテアーゼが含まれているものを選ぶようにしてください。
プロテアーゼとはタンパク質分解酵素のことで、これが含まれていないものはタンパク質の消化には役立ちません。
※iHerb で「消化酵素」と入れて検索しても、プロテアーゼが含まれていないものは探した限り見かけませんでしたが、カンジダ除菌用の消化酵素などプロテアーゼが含まれないサプリは用途が違うためご注意ください。
iHerb で購入できるものとしては以下のようなものがあります。
- Thorne Research, バイオジェスト (牛、豚の抽出物を使用しているためアレルギーにはご注意ください)
- Enzymedica, グルテンイーズ (グルテンの分解酵素であるDPP-4も配合されています)
- Enzymedica, ゴールド + プロバイオティクス (プロバイオティクスも配合されています)
まとめ
タンパク不足になる原因として、タンパク質の摂取不足、タンパク質の消化力の低下がありますが、意外と消化力の低下には注意が向けられていないことが多いと思います。
タンパク質の消化力が低いままタンパク質の摂取量を増やすと、未消化のタンパク質により腸内の悪玉菌やカンジダが増殖する、便秘が悪化するなど腸に負担をかけることになります。
栄養を補充するためには消化力を整えておくことが重要になるため、まずは消化力の改善に取り組んでみてください!