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腸内環境が及ぼすさまざまな影響

栄養療法に取り組む際に欠かせないのが腸内環境のチェック。

腸は全身のコンディションに影響を与える重要な臓器です。

腸内環境を改善すれば栄養療法の大部分は成功したといっても過言ではありません。

栄養療法において腸内環境の改善がいかに重要であるか解説していきます。

目次

腸の状態は全身に影響する

栄養素の吸収をおこなう腸

栄養素の吸収を主におこなう臓器が腸です。

腸の状態により栄養素の吸収効率も変わります。

例えば、腸内環境が悪化しており腸壁の細胞に炎症があれば栄養素の吸収効率は下がってしまいます。

腸内環境が悪ければ良質な食事やサプリメントを摂っても効率的に栄養素を吸収できず、当然ことながら栄養療法による治療のスピードも遅くなってしまいます。

 

毒素の吸収をブロックする腸

腸の驚くべき機能のひとつが、人間に必要な栄養素を取捨選択して吸収していることです。

つまり、人間にとって有毒な物質は吸収されずにそのまま腸を素通りして便と一緒に排泄されます。

 

この機能を担っているのがタイトジャンクションという腸壁の細胞と細胞の間を埋めているタンパク質です。

タイトジャンクションは未消化物や毒素など、本来吸収されるべきではないものが腸壁の細胞と細胞の間から入らないようにブロックしています。

このタイトジャンクションの機能は腸内環境の悪化、例えばカビの一種であるカンジダや悪玉細菌の増殖により低下することが知られています。

 

タイトジャンクションの機能低下により腸内の毒素が見境なく吸収されることになります。

 

毒素の排泄をおこなう腸

腸のもうひとつの重要な機能が体内の老廃物や毒素の排泄です。

体内の老廃物や毒素はいったん肝臓に集められて胆汁とともに腸管内に分泌され、便と一緒に排泄されます。

しかし腸の蠕動運動の低下や便秘があると毒素が腸内にとどまることになり、その毒素は腸から再度吸収されてしまうのです。

これを防ぐためには腸内環境を整えて排便をスムーズにしておく必要があります。

 

腸と免疫

腸内環境と免疫は密接に関係しています。

 

一部の腸内細菌は食物繊維を発酵して短鎖脂肪酸を生成します。

この短鎖脂肪酸が過剰な免疫反応を制御するregT細胞の発現を促進することが知られています。

アトピーなどのアレルギー疾患ではこのregT細胞の発現が低下しており、免疫の暴走が起こっている可能性があります。

 

また、腸内に炎症があるとその炎症を鎮めるために副腎からコルチゾールというホルモンが分泌されます。

コルチゾールは抗炎症作用があるのですが、同時に免疫を抑える作用もあるのです。

コルチゾールが正常に分泌されている間はいいのですが、炎症の慢性化により過剰にコルチゾールが分泌されると免疫が過剰に抑制されて細菌やウイルスに感染しやすくなってしまいます。

 

そして過剰なコルチゾールの分泌が続くと、今度は副腎が疲弊してしまい反対にコルチゾールの分泌が低下していきます。

そうなると今度は免疫反応を制御できず、過剰な免疫によるアレルギー疾患を引き起こすことになります。

 

このように、腸内環境の悪化により免疫の制御が効かなくなってしまうのです。

 

腸と肝臓

腸と肝臓は門脈という血管で繋がっています。

つまり肝臓は腸で吸収された栄養素(脂質を除く)が最初に到達する臓器なのです。

 

これは腸から侵入してきた毒素も同じです。

腸内環境の悪化により毒素の吸収量が増えると、まず最初に肝臓がダメージを受けることになります。

 

肝臓はさまざまな代謝反応をおこなう臓器であり、全身の毒素を排出するための主要な臓器でもあります。

腸内環境の悪化により肝臓がダメージを受けると身体の解毒機能が低下してしまうことになるのです。

 

また肝臓は甲状腺ホルモンを活性化したり、血糖値を維持するためのグリコーゲンを貯蔵する臓器でもあるので、肝機能の低下により甲状腺機能低下の症状や低血糖症状が現れることもあります。

 

腸と脳は繋がっている

腸と脳の関係について「腸脳相関」という言葉があります。

実際に腸と脳はお互いに影響しあっているのです。

例えば、脳がストレスを感知すると交感神経を介して腸の蠕動運動を低下させます。

 

逆に腸内環境が脳に影響を与えることもあります。

うつ病と関連する脳内の神経伝達物質であるセロトニン。

実は体内のセロトニンの大部分が腸で合成されています。

 

腸で合成されたセロトニンが脳に移行して神経伝達物質として直接作用することはありませんが、副交感神経の一種である腸の迷走神経を介して間接的に脳に作用することが知られています。

腸内環境の悪化によりセロトニンの合成量が低下することで脳に影響を与えるのです。

 

まずは腸のケアから始める

自覚症状が現れにくい腸

便秘、下痢や腹部の張りがきっかけで腸の異常に気づくことが大半かと思います。

しかし、たとえこれらの症状がなくても腸に異常があることが多いのが事実です。

 

腸に慢性的な炎症があっても痛みなどのわかりやすい自覚症状はなく、身体がだるい、やる気が出ない、朝起きられないなど一見すると腸とは関係ないような症状が現れることが多いのです。

なので、何かしら身体に不調がある場合は必ず腸に異常があるといっても過言ではありません。

腸内環境の改善については全員が取り組むべきなのです。

 

腸内環境と副腎疲労

副腎疲労とは副腎から分泌されるホルモンであるコルチゾールの分泌が低下している状態のことですが、このコルチゾールの分泌低下により慢性疲労や意欲の低下、抑うつ症状、朝起きられない、記憶障害などさまざまな症状が現れます。

これらの症状のため副腎疲労があると食事、睡眠の改善や運動になかなか取り組めず、栄養療法の効果も出にくくなってしまいます。

 

腸内環境の悪化と副腎疲労は密接に関係しています。

腸内環境の悪化により腸内の毒素が身体に吸収されるようになると全身に炎症を起こします。

この炎症を抑えるために副腎から抗炎症作用のあるコルチゾールが分泌されますが、炎症の元となる毒素は腸から吸収されるので炎症は慢性化します。

それに伴いコルチゾールの過剰な分泌が続いて副腎に負担がかかり、最終的にはコルチゾールの分泌が低下して副腎疲労になってしまうのです。

 

また、コルチゾールには身体のタンパク質を分解する作用もあるので、過剰分泌により腸壁が薄くなったり腸の免疫力が低下し、腸内環境がさらに悪化していくことになります。

腸内環境の悪化と副腎疲労はこのようにしてお互いを悪化させる要因となるのです。

 


 

先ほども記載したとおり、腸内環境の改善については誰もが取り組むべき課題です。

一見すると腸とは関係ないような身体の不調も腸内環境の悪化が原因だったということも多いのです。

腸内環境は適切な食事やサプリメントの摂取、副腎のケアにより改善させることができます。

カウンセリングにてそのお手伝いをすることができますので、まずはお気軽にお問い合わせください。