何をしてもよくならない慢性疲労や抑うつ症状などの不調。
病院に通って治療をうけている、自分で食事やサプリで治療を続けているという方も多いかもしれません。
しっかり休んでも疲れがとれない、平日も休日も関係なくずっと疲れている、朝起きるのがつらい、カフェインを摂らないと動けない、以前は楽しかったこともすぐ疲れてしまう、何事にも興味が持てない。
これらの症状は典型的な慢性疲労の特徴です。
慢性疲労はちょっとやそっとのことではとれません。
すぐに効果の出る薬もありません。
慢性疲労は今までの生活習慣の積み重ねが症状となって現れたもので、原因となる生活習慣を取り除くことが唯一の解決策です。
慢性疲労がひどく、病院で診察を受けたという方もおられるかもしれません。
ただ診察を受けても、「原因になるような病気はありません」とか「食事をしっかり摂って休養しましょう」などと言われて終わり、なんていうことが大半なのではないでしょうか。
場合によってはうつ病の診断をつけられて、抗うつ薬や精神安定剤などを処方されたという方もいらっしゃるかもしれません。
しかし、それらの対処法では慢性疲労は良くなりません。
なかなか疲れが取れないからコーヒーやエナジードリンクを飲んで、なんとか動いているという方が多いです。
以前は私もそうでした。
コーヒーやエナジードリンクに含まれるカフェインの効果で、一時的に身体は元気になりますが、その後にひどい疲労に見舞われるという経験をされたことがあると思います。
実は、それは身体に相当な負担がかかっているということです。
具体的に身体のどこに負担がかかっているのかというと、それは「副腎」という臓器です。
副腎は腎臓の上側にあるピラミッドのような形をした小さな臓器です。
身体にストレスがかかると、副腎から「コルチゾール」というホルモンが分泌されます。
コルチゾールは身体を「ストレス対抗モード」へ変えてくれます。
人間の身体はコルチゾールのおかげで、多少のストレスがあっても元気に動けるようになるのです。
しかし、副腎が疲れてコルチゾールの分泌が少なくなってしまうと慢性疲労のような症状が現れます。
つまり原因不明の慢性疲労は、実は「副腎疲労」が原因なのかもしれません。
目次
副腎疲労とは?
副腎疲労とは主にストレス、栄養失調や体内の慢性炎症が原因となり、副腎から分泌されるコルチゾールというホルモンが少なくなっている状態です。
コルチゾールには身体の機能を維持するための大切な役割がたくさんあります。
以下のとおりです。
- 炎症を抑える
- 血糖値を維持する
- 抗ストレス作用
- 免疫調節作用
- 概日リズムの調整作用
コルチゾールの分泌が少なくなることにより、これらの機能が維持できなくなります。
- 炎症が抑えられない→過剰なアレルギー反応の原因、エネルギー産生の低下、うつの原因
- 血糖値が維持できない→低血糖頻発による疲労、眠気、うつ症状
- ストレスに対抗できない
- 免疫の調節ができない→過剰なアレルギー反応の原因
- 概日リズムが調整できない→睡眠障害、昼夜逆転
コルチゾールの分泌低下、つまり副腎疲労になると疲労をはじめ様々な症状が現れます。
副腎疲労の影響は多岐にわたるので、まったく関係ないと思っていた症状の原因が実は副腎疲労だったということもあるのです。
副腎疲労を起こしやすい人
副腎疲労を起こしやすい人というのは、何らかの理由でコルチゾールが出続けている状態の人です。
コルチゾールを分泌させる一番大きな要因はストレスです。
ストレスが多い職種の人は副腎疲労が多い傾向です。
例えば、医療関係者。
医師、歯科医師、看護師、薬剤師、医療事務など。
あとは高給取りの会社員や、パソコンに向かう時間が長く人と会話をする時間があまりない人などは副腎疲労になりやすいようです。
副腎疲労の特徴的な症状
副腎疲労の人には特徴的な症状がいくつかあります。
- 朝起きられない、起きるのがつらい
- 十分に寝ているのに疲れが取れない
- 塩分を欲しがる、しょっぱいものにさらに塩をかけてしまう
- 常に疲れている
- 以前は楽しかったはずのこともすぐに疲れてしまう
- 日常的なことがとても疲れる
- ストレスに対処できなくなった
- イライラすることが多い、なんてことないことでも気に障る
- 性欲が低下した
- 怪我や病気が治るのに時間がかかるようになった
- 立ちくらみが多い
- うつ症状がある
- 何をしても楽しくない、興味が持てない
- PMS(月経前症候群)が強い
- チョコレートが欲しくなる
- 食事を抜くと調子が悪くなる
- コーヒーやお菓子がないと動けない
- 考えがまとまらない
- 記憶力が低下した
- 午前中は調子が悪く、夕方になるにつれ元気になる
基本的には慢性の疲労症状やうつ症状、脳の機能低下などが症状として多いような印象です。
また、塩分・甘いもの・カフェインを欲する、夕方になると元気になるというのは、この中でも特徴的な症状だと思います。
いかがでしょうか?いくつか当てはまる症状をお持ちの方がけっこういらっしゃるのではないでしょうか。
当てはまる項目が多いほど副腎の疲労が進行している可能性が高いので要注意です。
なぜ副腎疲労になるのか?
副腎疲労におちいる一番大きな要因は、コルチゾールの分泌異常です。
コルチゾールには分泌リズムがあり、朝の起床後に一番多く分泌され、昼過ぎから減り始め、夜間はほとんど分泌されなくなります。
この分泌リズムが崩れると、徐々に副腎疲労が進行していきます。
コルチゾールは炎症を抑えたり、血糖値を維持したり、ストレスに対抗するためのホルモンです。
つまり、身体に慢性の炎症、血糖値の急激な上昇・下降、ストレスなどがあればコルチゾールが不必要に分泌されることになります。
また、夜間の眠っている間はコルチゾールの分泌がほとんどありませんが、夜ふかしをして起きていると夜間のコルチゾールの分泌が増えます。
慢性炎症、血糖値の急激な上昇・下降、ストレス、睡眠不足はコルチゾールの分泌リズムを崩していきます。
分泌リズムが崩れることによりコルチゾールの分泌量が多い状態が続くと、最終的には副腎からコルチゾールを分泌することができなくなり、副腎疲労の症状が現れるのです。
コルチゾールには身体のタンパク質を分解してエネルギーに変えるという作用もあります。
コルチゾールが出過ぎると、身体のタンパク質の過剰な分解や免疫力の低下、脳の海馬の萎縮が進むということが起きます。
これを防ぐために、脳が副腎にリミッターをかけてそれ以上コルチゾールを分泌させないようにするわけです。
副腎疲労の原因
副腎疲労をまねく要因として次の3つがあげられます。
①24時間続くストレス
先ほども記載しましたが、副腎から出るコルチゾールには分泌リズムがあります。
だいたい朝の8時に分泌量がもっとも多くなり、夕方頃にはかなり少なくなり、夜間はほとんど分泌されていません。
つまり、夜間は副腎が休息をとる時間帯です。
このリズムが保たれることにより副腎はコルチゾールの分泌を続けることができるのです。
しかし、夜間勤務のある人や日常的に夜ふかしをしている人は夜間にもコルチゾールが分泌されています。
これが続くことにより副腎は休息を取れなくなり、徐々に疲弊していくのです。
②慢性の炎症
コルチゾールには身体の炎症を鎮める作用があります。
ケガや風邪の時には、その炎症を鎮めるために一時的にコルチゾールが大量に分泌されます。
しかし、その炎症が慢性化してしまうと副腎は必要以上にコルチゾールを分泌することになります。
ケガや風邪による炎症はわかりやすいのですが、注意しなければならないのが自覚症状のない「隠れた炎症」です。
自覚症状のない炎症として起こりやすいのが、腸・肝臓・胃・上咽頭・歯の炎症です。
例えば、腸内環境の悪化による腸内の炎症は痛みを伴うものではないのでなかなか気付きにくいです。
また、虫歯もかなり進行しないと痛みが出なかったりするので炎症があっても意外と気付かないものです。
気付きにくい炎症
- 虫歯・歯周炎
- 上咽頭炎
- 脂肪肝による肝臓の炎症
- 腸内環境の悪化による腸の炎症
- ピロリ菌感染による胃の炎症
③食事を抜く
1回の食事により血糖値が維持できる時間は食後2〜3時間程度と言われています。
しかし、人間はそれ以上の時間食事を摂らなくても血糖値を維持することができています。
それは、筋肉中のタンパク質がコルチゾールの作用により分解されてブドウ糖に変換されるからです。
なので、摂取カロリーが少ないと血糖値を維持するためにその分コルチゾールが余計に分泌されることになります。
つまり、食事を抜いたり食事制限を続けたりすると徐々に副腎が疲弊していくことになるのです。
【副腎疲労の治し方】
副腎疲労の改善には次の3つのことに取り組む必要があります。
①生活習慣の改善
過度なストレスは副腎疲労を悪化させます。
人の悩みの大部分を占めるのが人間関係だと言われています。
嫌いない人・苦手な人に毎日会わなければならない状況というのは精神的にも身体的にも大きなストレスです。
職場や家庭での人間関係を見直し、環境を変えることは副腎疲労の治療にとってはとても重要です。
また、夜型の生活も副腎疲労を悪化させます。
夜間にきちんと眠ることにより、副腎の機能が保たれます。
コルチゾールの分泌リズムを正常に保つには、遅くとも23時までには寝て毎朝決まった時間に起きることが大切です。
朝起きたら太陽光を目に入れることにより、概日リズムを統制する視交叉上核が刺激されて体内時計がリセットされます。
体内時計のリセットによりコルチゾールの分泌リズムも正常に保つことができるのです。
②食生活の改善
食事から糖質を供給できないと、筋肉中のタンパク質をブドウ糖に変換するためにコルチゾールが余計に分泌されます。
なので、副腎疲労の人が食事制限、糖質制限をするとかえって症状が悪化する可能性があります。
余計なコルチゾールの分泌を抑えて副腎を休ませるために、食事により血糖値を維持する必要があります。
副腎疲労の治療中は適度に糖質を摂取する必要があるので1日3食を基本として、それに加えて補食をする必要があります。
食事により血糖値が維持できるのは健康な人で4時間、副腎疲労の人は2時間程度だと言われています。
なので、食事と食事の間に補食を入れることにより血糖値を維持させます。
副腎疲労が重症な人は1時間おきにでも補食を入れたほうがいいでしょう。
補食に使うものとしては、できれば砂糖たっぷりのスイーツではなく干し芋や一口大のおにぎりなどデンプン質なものが良いでしょう。
捕食に使える食材
- 干し芋
- 甘栗
- 一口大おにぎり
- くず湯
③適切な栄養素の摂取
副腎において、コルチゾールはコレステロールが代謝されることにより作られます。
この時に使われるのが以下の栄養素です。
- ビタミンC
- ビタミンB5(パントテン酸)
- マグネシウム
ビタミンCは血中を1とすると、脳・血液中に20倍、白血球に80倍、副腎に150倍の濃度で含まれています。
ビタミンC濃度が体内で一番高いのは副腎であり、副腎ではビタミンCの需要が非常に高いことを意味します。
特にストレスが多い時、感染がある時などはコルチゾールが大量に必要になるので、その分ビタミンCも大量に必要になります。
ビタミンCは摂取後すぐに体から排出されてしまうので、こまめに摂取する必要があります。
ビタミンBにはさまざまな種類がありますが、複数のビタミンBが共同で作用することが多いのでコンプレックス(さまざまな種類のビタミンBを含むもの)で摂取する必要があります。
マグネシウムもコルチゾールの合成の際に必要な栄養素です。
マグネシウムについてはほとんどの人が1日の推奨摂取量を摂取できておらず、不足しやすい栄養素です。
意識的に摂取していく必要があるでしょう。
副腎疲労と他の病態との関わり
副腎疲労の人の場合、副腎疲労単独ではなく他の異常もあわせて起こしていることがほとんどです。
副腎疲労では以下のようなことが起こります。
- ストレスに耐えられない
- 血糖値の調節障害
- 炎症に歯止めが効かない
- 身体のタンパク質の過度な分解(特に筋肉、腸壁)
- ホルモンバランスの崩れ
これらのことにより副腎疲労とともに起こりやすい症状が以下のようなものです。
- うつ
- 慢性疲労
- 腸内環境の悪化
- PMS
- 体重の増加
副腎疲労の人は特に腸内環境が必ずと言っていいほど悪くなっています。
副腎疲労になると腸内環境が悪くなる、腸内環境が悪くなると副腎疲労が悪化するというふうに、どちらが先に起こるかは人それぞれですが、副腎疲労と腸内環境はセットで治療した方が確実に治療の効率が上がります。
副腎疲労でお困りの方へ・カウンセリング案内
副腎疲労は生活習慣の積み重ねの結果起こるものです。
改善するには生活習慣を改善する必要がありますが、正しいやり方でないとなかなかうまくいかなかったり、症状が悪化してしまうことがあります。
副腎疲労の期間が長ければ長いほど改善までにかから期間も長くなります。
個人差はありますが、人によっては改善に数ヶ月〜数年かかることもあります。
あせらずコツコツと継続していくことが何よりも大事なことなのです。
カウンセリングにて副腎疲労改善のお手伝いをすることもできますので、副腎疲労でお悩みの方はお気軽にお問い合わせください。